スタッフ

   武知 進士 (教授)

教員紹介

   宮内 優  (講師)

教員紹介

2021年11月宮内優先生が日本薬学会九州山口支部学術奨励賞受賞者を受賞しました

受賞タイトル「タンパク質間相互作用による薬物代謝酵素の制御機構」

2021年度日本薬学会九州山口支部学術奨励賞受賞者

2021年9月宮内優先生が日本薬学会 環境・衛生部会「 部会賞・金原賞」を受賞しました

受賞タイトル「UDP-グルクロン酸転移酵素研究の基盤:小胞体局在機構、機能発現、およびシトクロムP450機能調節」

令和3年度日本薬学会 環境・衛生部会「 部会賞・金原賞」受賞者


疾病の発症や予後に関している様々な要因は、「内部環境(生理的、遺伝的)要因」と「(直接人体を刺激し、侵襲しあるいは影響する)要因」と、その二者を取り囲む「外部環境(自然環境、社会環境)要因」等に概別される。これらの要因が、関連して影響しあって疾病の発症に至っている。

 近年、疾病の予防対策において、従来の成人病を対象とした「二次予防」より進展して、「生活習慣病」の考え方、健康的な生活習慣を確立することで、疾病の発症そのものを予防する「一次予防」の考え方が重視されている。この観点において、衛生学とは、様々な発症(健康の阻害)の原因を明らかにして、その原因の排除、原因からの防御をすることで、現在の健康を維持し、さらには増進することを目指した予防医学を解説することにあります。

研究テーマ : Dihydropyrazine類の科学

 グルコサミンからの変化生成物であるジヒドロピラジン(DHP)類が、DNA鎖切断作用(Yamaguchi, T., et. al. : Dihydropyrazine Derivatives as a New Type of DNA Strand Breaking Agent, Biol. Pharm. Bull ., 19 , 1261-1265, 1996)を示す事を明らかにして以来、 その切断作用の機構の解明を目指している。 DHP類が、生体内においては AGE ( Advanced Glycation Endproducts ) の一種として、グルコースより生成され、生体へ何らかの影響を与えていると推定される。糖との因果関係から、「糖尿病およびその合併症の発症の原因に関わる基礎研究」として、研究中である。これまでに、in vitroにおける DHP類の化学変化を明らかにしてきた。今後は、その応用面の成果を得ることを目的として、in vivo における DHP類の挙動を調べ生体との関わりの面での展開を目指している。

これまでに、以下に述べるような、DHP類の諸性質が明らかになってきた。

     1. High chemical reactivity ( in vitro )
     2. DNA strand-breaking activity ( in vitro )
     3. Generation of hydroxyl and carbon-centered radicals( in vitro )
     4. Distribution into the brain and spinal cord in mouse ( in vivo )
     5. Induction of apoptosis in cultured cell ( in vitro )
     6. Activation of MAP kinase in cultured cell ( in vitro )
     7. Growth inhibition effect in E.coli and Lactobacillus casei ( in vivo )
     8. Induction of mutagenesis in E.coli ( in vivo )
     9. Lethal effect in E.coli and Lactobacillus casei ( in vivo )
     10. Anti-virus effect( in vivo )
     11. Inhibition of cardiac function in rat( in vivo )
     12. Inhibition of GAPDH on glycolytic cycle( in vitro )
     13. Inhibition of beating in ventricular clusters( in vitro )

 in vitro の反応で、グルコースがアミノ基を取り込み、アミノ糖になり、これが2分子間脱水縮合することで、DHP誘導体を生成することは明らかである。故に、in vivo においても、非酵素的に同様な反応が進行していることが予測される。したがって、その DHP類の生体への影響を明らかにすることで、 DHP類と疾病との因果関係が明らかになることが期待される。 DHP類が糖由来の変化生成物であることから、まずは糖尿病およびその合併症との関連を予測して、研究を進めているが、中枢神経細胞への集積(T. Yamaguchi et al., Biol.Pharm.Bull ., 26 ,1523-1527, 2003):The Behavior of Dihydropyrazine with DNA Strand-Breakage Activity in vivo )、その場でのアポトーシス誘導が推定される。したがって、神経細胞の死に起因する難病とDHP類の関わりも予測される状況である。また、mutagenesis の誘導(S.Takechi, et.al.,: Growth inhibition and mutagenesis induced in Escherichia coli by dihydropyrazines with DNA strand-cleaving activity: Mutat. Res., 560, 49-55, 2004) も明らかになった。この事は、糖尿病と癌との関連が報告( Diabetes Frontier ,13 (5), 2002 : 特集:糖尿病と悪性腫瘍)されていることからも、DHP類と生体との負の関わり(疾病との因果関係)が、より強く予測される。

 DHP類のDNA鎖切断作用を、初めて明らかにしたのは我々である。しかも、このDHP類は不安定で扱い難い化合物であるが、言い換えれば、化学的に反応性が高い化合物である。したがって、生体内でのDHP類の存在を直接的に調べるのは困難であり、また、その他の諸性質についてもほとんど知られていない。ところが、DHP類の酸化(脱水素反応)による変化生成体であるピラジン類は、食品の生産、加工、調理の過程で生成され、食品中の存在は香味成分として周知の事実( J.Agr.Food Chem ., 21 ,22-30,1973)である。他方、生体内のピラジン類の存在は、糖尿病患者の血中、尿中の増加がすでに報告( Analytical Chemistry ,45 ,763-767,1973)されている。このピラジン類の前駆体であるDHP類の生体内での生成、そしてその存在と分布が、生体へいかなる影響を及ぼすかを明らかにすることは、人の健康維持と疾病からの防御に資するものと考えている。

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