オクタン酸ナトリウムとN-アセチル-L-メチオニンのヒト血清アルブミン安定化効果に関する構造生物学的研究

HSA–Oct–N-AcMet構造

図1 HSA構造中におけるOctおよびN-AcMetの結合部位

オクタン酸ナトリウム(Oct)はヒト血清アルブミン(HSA)の熱安定性を向上させ、N-アセチル-L-メチオニン(N-AcMet)はHSAの酸化を防ぐことが知られている。また、これらの分子は互いのHSA安定化効果を妨げないことも確認されている。そこで、本研究室では、崇城大学薬学部の小田切優樹 先生との共同研究で、OctとN-AcMetによるHSA安定化効果の分子機構を明らかにするため、HSA–Oct–N-AcMet三元複合体の立体構造解明を試みた。

構造解析の結果、Octの結合部位はHSAのサブドメインIIAとIIIAの2ヶ所で、いずれの部位でも分子内部に存在する疎水性ポケットに1分子ずつ結合していた。一方、N-AcMetの結合部位はサブドメインIIAに存在していて、サブドメインIIAポケットの入口部分に水素結合を介して結合し、酸化を受けやすい側鎖は溶媒領域に露出されていた。これらの結果から、OctによるHSA熱安定化効果は、HSAサブドメインIIIA分子内部の相互作用領域が増加したことに起因すると考えられ、また、N-AcMetによる抗酸化効果は、側鎖が溶媒領域に露出していることからHSAへの結合に影響されることなく発揮されると考えられる。

※ 本研究成果は、国立研究開発法人医療研究開発機構 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業)の支援により得られました。

Akito Kawai, et al., BBA - Proteins and Proteomics, 1865, 979-984 (2017) [PubMed]

PDB ID; 5x52

Biophysical Chemistry